
行政書士
宮城 彩奈
「許認可申請や経審」から「建設業法務」「補助金を活用した資金調達」まで、建設業者様の経営全般をサポート。
また、許可取得後についても「請負契約書のリーガルチェックや作成」から「許可や資格者の期限管理」「建設業法違反にならない技術者の配置」まで継続的に経営サポートをしている。
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[経営事項審査]
2025年(令和7年)7月1日から、経営事項審査(経審)において「資本性借入金」が自己資本として評価できるようになりました。これは、公共工事を狙う建設業者にとって資金調達の選択肢が広がる大きな制度変更です。本記事では、改正の背景から審査への影響、申請に必要な書類までを分かりやすく解説します。
目次
2025年6月25日、国土交通省は経営事項審査(経審)に関する重要な通知を発表しました。これにより、一定の要件を満たす「資本性借入金」が、自己資本として審査の対象に含まれることになったのです。この制度変更は、資金調達の多様化が求められる建設業界にとって、大きな転換点となります。
そもそも建設業は、公共事業の受注や設備投資に多額の資金が必要となる一方で、景気や政策の影響を受けやすい産業です。そのため、金融機関からの借入に頼る場面が多く、財務の健全性を示す「自己資本比率」が伸び悩む傾向にありました。
今回の改正は、そうした業界の課題を踏まえた上で、財務基盤の強化と信用力の向上を図る目的があります。特に、一定の返済条件を満たす借入金を資本とみなすことで、従来よりも柔軟な資金調達を後押しする狙いがあるのです。
中小の建設業者にとっては、これまで低く評価されがちだった財務構造を見直すチャンスでもあります。経審での評点アップに直結する制度改正だけに、早期の理解と対応が求められています。
資本性借入金とは、形式上は借入金でありながら、実質的には自己資本とみなすことができる性質を持つ資金のことです。返済期限が長期に設定されていたり、企業が破綻した際には他の債務よりも後回しに返済される「劣後特約」が付されている点などが特徴で、財務上の安定性を評価する際に自己資本と同様に扱われることがあります。
今回の経審改正においては、主に中小企業向けの支援策として日本政策金融公庫や商工中金などから提供される資本性借入金が対象となっており、これらは一定の要件を満たす場合に自己資本として評価されるようになりました。
たとえば、契約上で返済順位が明確に劣後していることや、定められた年限以上の返済猶予があることなどが、その要件に含まれます。これにより、建設業者が金融機関から調達した資金であっても、財務諸表上は資本として評価され、自己資本比率の改善につながるのです。
2025年7月1日以降の経営事項審査申請で、審査基準日(決算日)が2025年3月31日以降の建設業者が対象です。
これまで自己資本が低く、評点で不利だった企業にとっては、資金調達の選択肢を拡げつつ経審の加点を狙える非常に有利な制度と言えるでしょう。
今回の制度改正によって、一定の要件を満たす資本性借入金は、経営事項審査において自己資本として加算できるようになりました。これは、建設業者にとって評点を押し上げる新たな手段となるもので、特に財務面で苦戦していた企業には大きな恩恵となります。
国土交通省が示した評価対象となる資本性借入金の条件は以下の通りです。
これらの条件を満たした資本性借入金は、自己資本比率や負債回転期間といった経審の評点項目に直接的なプラス影響を与えます。特に、負債合計額から控除し、自己資本額に加算するという取り扱いにより、財務健全性の評価が大幅に改善されるケースもあるのです。
ただし、残存期間が5年を切った場合には、自己資本とみなされる割合が毎年20%ずつ減っていくなど、段階的な評価となる点には注意が必要です。正確な証明書類の準備と、対象制度に適合しているかの確認が、評価の鍵を握ると言えるでしょう。
資本性借入金を経審の自己資本として評価してもらうには、明確な証明と裏付けが必要です。特にこの制度では、所定の専門家による証明書と、契約書の提出が求められます。
まず、資本性借入金であることを証明するために必要なのが「資本性借入金該当証明書」です。この証明書を発行できるのは、公認会計士、税理士、または1級建設業経理士のいずれかの資格を持つ者に限られています。つまり、資金を貸し付けた金融機関ではなく、第三者として財務に通じた有資格者が、借入の内容が制度の要件に適合しているかをチェックし、証明する形になります。
さらに、証明書の提出にあたっては、借入契約書も必須となります。契約書には、返済方法(原則として期限一括償還)や償還期間、劣後性、金利の業績連動性など、審査に必要な要素が明記されていなければなりません。これらの書類は、経営状況分析申請時にセットで提出する必要があります。
注意すべき点は、証明書と契約書の内容に矛盾がないことを確認することです。もし不一致が見つかれば、自己資本への加算が認められないばかりか、減点や審査の遅延にもつながりかねません。また、証明書の発行には一定の時間がかかるため、余裕を持った準備が求められます。
この制度を活用する際には、早めに顧問税理士や会計士などと相談し、借入の設計段階から証明可能な条件を整えておくことが重要です。
今回の資本性借入金に関する改正は、建設業者にとって単なる制度変更ではなく、経審の評価を根本から見直すためのチャンスでもあります。特に、これまで自己資本比率や財務体質で不利とされていた中小・中堅の建設業者にとっては、積極的に活用すべき制度と言えるでしょう。
まず第一に検討すべきは、自社の財務構造と経審における点数構成です。自己資本比率が低く、総合評定値(P点)に影響している場合、資本性借入金を導入することでその弱点を補強することが可能になります。これにより、公共工事の入札における競争力を高めることができます。
ただし、制度を活かすには事前の準備が不可欠です。借入条件の設計段階から、公認会計士や税理士、1級建設業経理士などの専門家と連携し、証明書の発行が可能な形で契約内容を調整する必要があります。単に「借入すれば加点される」というものではなく、制度要件を正確に満たすことが評価の前提です。
また、金融機関との関係も重要です。資本性借入金の制度を提供している政府系金融機関(日本政策金融公庫など)や民間金融機関と積極的に対話を持ち、自社の資金計画や事業戦略に即した借入の組み立てを行うことが求められます。
経審はあくまで過去の実績と現在の体制を点数化する仕組みです。しかし、この制度の導入により、将来の成長や健全な資金調達に向けた「戦略的な姿勢」も評価対象となる環境が整いつつあります。だからこそ、受け身ではなく「どう使いこなすか」を意識した対応が、今後の入札競争を勝ち抜く鍵になるでしょう。
2025年の経営事項審査(経審)改正により、「資本性借入金」が自己資本として評価される新たな仕組みが導入されました。これは、財務基盤の強化と公共工事入札の競争力向上を両立させる、建設業者にとって非常に有効な制度です。
特に、中小建設業者にとっては、従来の借入では不利とされていた財務評価を、制度を活用することで大きく改善できる可能性があります。ただし、活用には専門家による証明書の取得や、契約条件の整備、正確な書類の提出といった事前準備が不可欠です。
この制度は、単なる一時的な加点措置ではなく、長期的な経営戦略の一環として取り入れる価値があります。制度を理解し、早期に対応を始めることが、これからの入札競争における差別化のカギとなるでしょう。
経営事項審査(経審)は、公共工事の入札に参加するために不可欠な審査 です。経審の点数(P点)が高いほど、大規模な工事の入札に参加できるチャンスが広がります。
経審の仕組みを理解し、適切な対策を講じることで、より有利な条件で公共工事の入札に参加できるようになります。
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資本性借入金は、すべての経審で自己資本として評価されるのですか?
いいえ、評価の対象となるのは、償還期限や劣後性、業績連動型の金利など、一定の要件を満たした資本性借入金のみです。さらに、公認会計士、税理士、1級建設業経理士が発行する証明書の提出が必要となります。
経審の評点には具体的にどのような影響がありますか?
資本性借入金が自己資本に加算されることで、「自己資本比率」や「負債回転期間」などの財務評価項目にプラスの影響があります。その結果、総合評定値(P点)が改善される可能性があります。
今回の経審改正は、どのような建設業者にとって特にメリットがありますか?
特に自己資本比率が低く、これまで財務面で不利とされていた中小建設業者にとっては、経審の点数改善に直結する大きなメリットがあります。柔軟な資金調達と高評価の両立が可能になります。
資本性借入金を活用しても点数があまり上がらないケースはありますか?
はい。自己資本に加算されても、他の項目(例えば技術力や工事実績)が不十分だと総合的な点数は大きく上がらない場合があります。また、資本性借入金の残存期間が短くなると評価割合が減少するため注意が必要です。
資本性借入金の導入で、建設業の財務改善にもつながりますか?
はい。借入でありながら自己資本として評価される資金を導入することで、貸借対照表上の健全性が向上します。金融機関からの信用力も高まり、経審対策と同時に財務改善も期待できます。
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